講義法
講義法の特徴
- 多数の受講者に、明確に重要な知識を伝達できる
- どこでも簡単に、時間に応じて実施することができる
- 特別な道具や準備が必要ない
- 外部の専門家を講師に迎えれば、すぐに実施できる
- 受講者に刺激を与えることができ、意欲を高める
講義法の注意点
- 講師から受講者の理解度が捉えにくいので確認する
- 講師の話しが押し付けにならないように質問をする
- 良い話を聞いて終わりにならないように課題を与える
講義法の解説
講義法(Lecture Method)は、文字通り、講師が受講者に対して、講義をするものです。営業 研修技法の中でも長い歴史を持っていて、現在でも最もよく使われている技法です。講義法 について、講師が一方的に話すだけでは退屈です。受講者がただ聞いているだけでは、飽き てしまうなどと批判する人がいます。確かに、講義法はそのような状況を招くことがあること は確かですが、講義法の本来の目的から言えばやむをえない点もあります。
なぜならば、講義法の目的は、もともと多数の受講者を対象とした営業研修技法であって、 受講者が十分な知識や経験を持たない場合に、効率よく知識を伝達するための技法だから です。したがって、受講者の中に経験年数が長い人や短い人がいる場合は、経験年数が長 い人は、基本を見直す謙虚な気持ちで受講することが大切です。
数十人以上を対象とした2~3時間までの講演ならば、講義法だけで完結するのが通常で す。しかし、それより長い時間で実施する場合は、講義法のもつ短所を補う意味でも、他の営 業研修技法をと組合わせて実施するようにします。その場合でも、講義法は最も基本で中心 となる営業研修技法であって、いかなる営業研修にも不可欠な技法です。
討議法
討議法の特徴
- 多くの意見を聞くので参加者の意見を変えやすい
- 時間をかけて話すので討議の結論を受け入れやすい
- 参加責任を感じるので行動に移す可能性が高い
- その場限りで終わらず問題意識を継続させる
- 講義法と連動させると効果を挙げやすい
討議法の注意点
- 参加者は事前にある程度の知識を持って臨む
- 講義法より時間がかかるので効率的に進行する
- 特定の人が支配しがちなので全員が発言させる
討議法の解説
討議法(Discussion Mesthod)は、講義法と並んで、営業社員研修では広く用いられている 研修技法です。討議法の歴史は古く、第一次大戦中にアメリカのチャルス・P・アレンが、監 督者訓練の中に取り入れたのが始まりといわれています。討議により、問題解決のための 考え方や結論に到達するまでの、正しい思考回路を把握させることが目的に開発されたとい うことです。
討議法には、何も制約のない自由討議による方法と、あらかじめリーダーが一定の結論を用 意しており、そこに導こうと意図する方法があります。前者を自由討議法、後者を開発的討議 法といって区別しています。それぞれに一長一短があります。最初は自由討議方式からはじ まったのですが、第二次大戦中に、定型化や体系化が進んで、開発的討議法が積極的に 実施されるようになりました。
討議法の最大の効果は、参加者の一人ひとりが、グループ内に働く圧力により、新しい考え方を 受け入れるようになることです。価値観の異なる人々が、討議を重ねていくうちに、次第に調和 して、新たな価値観へと集約していくことが最大の特長です。
ブレーンストーミング
ブレーンストーミングの特徴
- 意見・アイデアの連鎖反応を巻き起こすことができる
- そのために良い・悪いという判断は一切しない
- そのために自由奔放な突拍子もない意見も歓迎する
- そのために質は気にせず大量の意見を出すようにする
- そのために他人のアイデアの改善や結合は大歓迎する
ブレーンストーミングの注意点
- 意見が拡散して収集がつかなくなるので最後に調整する
- 時間がかかるので時間のゆとりがある時に実施する
- 数多くの意見が出るので全部の意見を記録しておく
ブレーンストーミングの解説
ブレーンストーミング(Brain Storming)は、1938年にA・F・オズボーンによって開発された手 法です。1人で考えてもすぐ限界に突き当たるので、集団で自由奔放に意見やアイデアを出 し合うことにより、お互いの相乗効果で、問題解決策を探ろうというのがブレーンストーミング の目的です。
ブレーンストーミングを実施する場合は、会議形式を取りますが、上記の特長のところにある 4つのルールを守るようにします。リーダーは、それらを徹底するために、少しでも批判的な 意見を言おうとする人を厳しく制すると共に、同じような意見が出ても、無視しないできちんと 尊重して記録するようにします。この点で、通常の会議とはかなり進め方が異なります。
ブレーンストーミングは、元来はアイデアを出す目的で実施していたので、営業研修でも創 造性の開発に主に使われていたのですが、チームの調和を図りやすいとか、メンバー相互 の認識が進むなどのメリットがあるので、営業研修の導入部分で実施する場合もあります。 ただ、意見が拡散して結論が出にくいために、解決を急ぐ場合には不適です。
ケーススタディ
ケーススタディの特徴
- 事例を用いるので問題を身近に感じて理解しやす
- 事例を取り上げればよいので、手軽に実施できえう
- 参加者に自分の役に立ったという印象を強く与ええう
- 手軽に取り組めるので、他の技法を組合わせやすい
- 明日からすぐに役立つ解決策を抽出することができる
ケーススタディの注意点
- 事例の選択を誤ると、意味のない討議になってしまう
- 抽象的な事例だと討議しにくいので、肉付けが必要
- あまり細かい事例を取り上げると全体が見えなくなる
ケーススタディの解説
ケーススタディ(Case Study)は、企業内の問題を簡略化して、ケース(事例)という形で提示して、 通常はグループによる討議によって、問題の本質を解明して、解決策を導き出そうという技法です。 アメリカのシカゴ大学で開発されたケースメソッドという方式と、ハーバード大学で開発されたケ ーススタディという方式があります。両者の違いは、ケースメソッドのほうが長文の詳しい設定を する点で、ケーススタディは5枚程度の記述に対して、ケースメソッドは15枚程度の記述となって います。
通常の営業研修では、参加者のレベルや時間配分などを考慮して、より簡略したケースを用いるこ とも多いです。ケースを作成するに当たって、次の5点に注意する必要があります。①実際に起こ っている事例だと思えるような信憑性があること ②議論しやすいようなテーマと内容で あること ③解決すると効果がある問題が含まれていること ④話や数値の整合 性が取れていること ⑤個人の誹謗中傷につながらないこと
営業研修では、ケーススタディは、社内の身近な問題を取り上げるために、特定の個人が問題の主 人公となってしまうようなケースはできる限り避けるようにします。実際の問題に近いことと実際 の人物を特定させないことのバランスを取ることに苦心します。
インバスケット
インバスケットの特徴
- 短時間で問題を処理する判断力が身につく
- 課題の本質を素早く見抜く力がつく
- 多くの課題を抱える中で、優先順位の付け方がわかる
- 状況に対する対応力が身につく
- 実際の場面に近い形で研修を受講することができる
インバスケットの注意点
- 管理者に限定した訓練で、ある程度の能力が前提となる
- 個人の判断力を養う訓練なので、少人数で実施する
- ケースを作成するのに、事前の十分な準備が必要となる
インバスケットの解説
インバスケット(In Basket)は、ケーススタディの一種ですが、通常のケーススタデイによる技法 とはかなり異なり、管理者に限定した特殊な技法ですので、ケーススタディから独立した1つの 営業研修技法として取り扱われています。インバスケットの名称の由来ですが、机の上に置かれて いる未決の書類を入れる箱のことです。歴史は古く、1952年にブリンストン大学のフレデリク センが教育訓練効果の測定手段として開発しました。
インバスケットを実施するには、綿密な準備が必要です。先ず研修の第1段階として、リーダーから 20~30種類の課題を与えられます。その形式も多様なもので、手紙、メモ、伝言、メール、報告 書などさまざまなものです。出所も上司から、部下から、得意先からなど多様にしておきます。課題 を与えられた参加者は、特定の職位の管理者という立場で、出張から戻ったばかりという場面設定で 2~3時間の限定された時間の中で、これらの課題に優先順位をつけて処理していきます。
インバスケット方式は、アメリカでは管理者への昇進テストや管理者研修などでかなり実施されて きた技法ですが、日本では手間がかかるためか、あまり普及していません。実力主義になり、管理者にもスピード感が求められる時代になりましたので、今後は営業管理者研修にも大いに活用されると思います。